自分の顔、体型が許せない。イメージとかけ離れている。鏡を見るのが怖い。人の視線が怖い。
このような恐怖感に襲われて、生活に支障も出てしまう「身体醜形恐怖症」になってしまう理由とは何なのでしょうか。
恐怖感から外出できずに引きこもる、拒食症になるなど、二次障害は様々ですが、その中で、何度手術を受けても満足できない、整形を繰り返してしまう人も多くいます。
終わりのない恐怖から抜け出す方法はあるのでしょうか。気になる症状、治療法についてお伝えします。
ルックス重視の風潮の中で・・
昨今、プチ整形することは珍しくない時代になりました。
シワを目立たなくするヒアルロン酸注入や、埋没法の二重術で、時間をそれほど費やさずに変貌を遂げられると、男性女性ともに人気があります。
反面、ネットでは、以前と比べて目や鼻の形が変わった有名人を「整形前」「整形後」として比較し、やり玉に挙げている様子が見られます。
「自然なままの美しさこそ本物」と言わんばかりに、有名人のすっぴん写真にも食い付き、「綺麗だ」「微妙だ」と盛り上がりを見せます。
そんな「自然な」ルックス重視な風潮の中、その「自然なまま」の自分の姿を受け入れることが、極端に困難な人たちがいます。
その人たちにとっては、鏡に映る自分の姿は、耐え難いほど醜く、理想とかけ離れていて、こんな姿でいるくらいなら死んだほうがいいとまで考えてしまうのです。
もし、誰かがネットで有名人のすっぴんを「ブサイク」と酷評したことで、その有名人がそれをきっかけに整形にのめり込んでしまったとしたら・・その人は、何を思うのでしょうか。
身体醜形恐怖症の症状
身体醜形恐怖症とは、自分の顔や体型を醜いと思い込み、鏡や、反射するガラスなどが見られなくなってしまい、人の目も異常に気になってしまうため、外出もままならなくなる症状です。
その部位は、髪、目、鼻、口、輪郭、手足、胸、尻、爪、皮膚などあらゆるパーツに及びます。
どんなに周囲の人が「醜くない」と言ってくれても聞く耳を持たなくなり、ひどければ真っ暗な部屋で長期間引きこもりになってしまいます。
原因は、過去に誰かからその箇所が変だとからかわれた経験があり、トラウマになっているケースと、特に理由もなく自分で強く思い込んでいるケースとがあります。
身体醜形恐怖症の人の中で、美容外科へ助けを求める人が多くいます。
美容外科へ施術を求めて訪れる人の約10%は身体醜形恐怖症の人と見られています。
傍から見れば気にするほどではないと思えても、当人はここが変だから絶対に治したい、と意志を曲げません。
ですが、何度施術しても、問題が解決しないことが多いのです。なぜなら、ここを治せば次はここ、というように、気に入らない箇所が次々に表れることで、終わりがないからです。
本当に治さなければならないのは、顔や体ではなくて、自分の姿をそのまま受け入れられない「心」なのです。
美容外科よりも先に、精神科へ
まずは精神科か心療内科を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
治療としては、抗うつ薬や抗不安薬などの薬物療法、カウンセリング、認知行動療法などがあり、自分が醜いと思い込んでいる部分を少しずつ受け入れていく訓練を行います。
人によっては治るまでに何年も掛かることがありますが、根気よく続けていくことが大切です。
美醜に囚われない、新しい自分に出会うこと
身体醜形恐怖症の人にとって何より必要なことは、自分の容姿にこだわる時間を減らすことも大切ですが、社会への適応力を養うことが最も重要であると言えます。
カウンセリングなどによって醜いと思っている部分が気にならなくなっても、社会復帰したときに、また別のことで何気ない一言に傷つき、症状が戻ってしまうことがあります。
根本にある芯の弱さ、完璧志向、歪んだ思考パターンを治さなければ、いつまで経っても完治できません。
見かけの美しさを競う風潮に流されず、周囲に何を言われても動じない強さ、自分はこれでいいのだという自信が、何より必要なのです。