ある人の話です。その人は、ある小さな部品製造会社で働いていて、その会社の社長はとても虚栄心が強く、自慢話一つするにも、事実よりもかなり盛って話す癖があり、また、頻繁に夜中まで飲んでは、翌朝の会議に参加しないことがあり、昼頃やっと出社したかと思えば寝ぐせの付いた髪に真っ赤な目をしているにも関わらず、いつもの作業着ではなくスーツで現れ「二時間お客さんと会議をしてきた」と言うらしいのです。
誰が見ても明らかに嘘だとわかるのに、なぜバレると思わないのか不思議だと、その人は首を傾げていました。
これが、虚言癖の怖いところです。あなたの周りにも、似たような人、いませんか?
周囲から見ればバレバレなのに、なぜ平気で嘘をつくのか・・これを読んだら少し理解できるかもしれません。
虚言癖の人は、嘘を認めない
昨年は、ある理系女子の歴史的大発見に不正が見つかったことや、再現実験も失敗に終わったことで、世間では「虚言癖があるのではないか」と話題になっていましたね。
不正が故意に行われたかどうかはまだはっきりしていませんが、もし故意だったとすると、その可能性は0ではないかもしれません。(※あくまで例え話です)
世間から注目されたい、自分の能力を示したい、という欲求が高まり、その欲求に実力が追いつく形なら理想的なのですが、追いつきそうもない実力と欲求の間を「嘘をつく」ことで埋め始めてしまったとしたら大問題です。
「世紀の大発見」とまではいかなくても、普段の生活や仕事でちょこちょこと、この「穴埋め作業」をしているとしたら、それは紛いもなく「虚言癖がある」と言えるのです。
そういった人は、自分を嘘つきだと認めません。中には、本当に嘘をついている感覚がない人もいます。
嘘をつき続けていると、あたかもそれが事実であるかのような、自己暗示に掛かった状態になるのです。
周りの人から「それは嘘じゃないの?」と指摘されると、ムキになって更に嘘を重ねたり「じゃあ、あなたのあの件はどうなんですか」と問題をすり替えたり、突然その場からいなくなって逃げたりします。
こうなると、周りの人との信頼関係を修復することはほぼ不可能となってしまいます。
虚言癖の入り口
ではなぜ、嘘に頼るようになってしまうのでしょうか。それは、その人が育ってきた環境が大きく影響していると言われています。
親が順位にこだわる人だったり、家族や他人を馬鹿にするような発言が多かったりした場合、自己顕示欲が強くなり、馬鹿にされることだけは避けたいと、過敏になるあまり、自分の経験や見聞きしたことを盛って聞かせるようになってしまう傾向にあります。
また、幼い頃、甘えたいときに親が多忙で家にいないことが多く、寂しい思いをした人も、虚言癖が出てしまうことかあります。
寂しいので構って欲しいという欲求は大人になっても持ち続け、色々な人に話し掛けてみるけれど、反応が薄い・・興味がなさそう・・自分はつまらない人間なのかと焦る・・嘘を少しついてみる、相手が驚いて興味を持ってくれた、ちょっとくらいの嘘なら罪はない・・これが、虚言癖の入り口です。
周囲はだんだんとわかってきます。「この人は話半分だな」と。何を言われても適当に返事をします。
この態度がまた、更に大きな虚言を生むことになります。
虚言癖を治す方法は?
虚言癖は病気ではありませんが、不安や寂しい気持ちが強い人は、なかなか治すのが難しいかもしれません。
でも、嘘をつき続ければ、必ずバレますし、社会的信頼は絶望的に失うことになります。
まずは、話を盛るのをやめましょう。有りのままを話して、反応が薄くても気にしないことです。
次のステップはいきなり大きくなりますが、嘘つきであったことを周囲にカミングアウトしましょう。
「無理!」という声が聞こえてきそうですが、もう既に周囲からは「嘘つき」呼ばわりされているのを、知らないのはあなただけかもしれません。
よほど鈍感な人でない限り、嘘って案外すぐにバレるものです。虚言癖があったけれど、これからは改める、と告知しなければ、この先何を言っても信頼してもらえません。
大げさに話すことをやめ、嘘もつかなければ、徐々に周囲も理解してくれるでしょう。勇気をもって踏み出してみて下さい。
虚言癖は何も生まない
「あの人が当てはまるかもしれない」と思った人がいれば、嘘を指摘し、正直に話すよう促してあげて下さい。
嘘をついて得することなんて何一つありません。その人が孤立してしまう前に、どうか手助けしてあげて下さいね。
もしも自分自身が「嘘をついてしまう事をやめられない」というのであれば、まず自分が嘘をついてしまっている事を自覚し、周囲に相談をしてみましょう。
そういった態度で友人と関わる事で、また違う自分に出会えるかもしれません。