SNSの普及や個人でのブログ開設など、ネット上での書き込みが非常に増えてきた現在ですが、ネット上での悪口はいつまで経ってもなくならないですよね。
「なぜネット上で悪口を書くの?」というと、それは人間の「没個性化」という性質が働いているからなんです。
没個性化ってなに?
匿名になると、いきなり攻撃的になったりする人間の性質を、心理学的に表現するとき、この「没個性化」という言葉が使われます。
人間は、責任の所在が不明な集団の中にあり、個人の責任が問われない環境にあるとき、一時的に自らのアイデンティティーを失います。そのため普段であれば、恐怖や恥、罪悪感といったことから抑圧されている行動が生じやすくなるようです。赤信号でも、みんなで渡れば怖くない、というわけです。
「没個性化」は、ネットの匿名性に隠れた他者の侮蔑や、普段は温厚な人であっても戦場では残虐な行為ができてしまうことの背景に説明を与えてくれる概念で、一般には、悪いとされる人間の行為の説明に用いられる傾向があるようです。
つまりネット上で悪口がなくならないのは、”匿名性である”事が要因としては非常に大きい事がわかります。
「普段抑圧されている行動を、匿名の場では思いっきり出せる」という攻撃的な人間心理が働き、そういった誹謗中傷などを行ってしまうんです。
没個性化は悪いばかりではない?
それでは匿名性は絶対悪だ!と言われると一概にそうも言えません。
たとえばチームのために自分のアイデンティティーを押し殺して、普段の自分にはできないことにチャレンジするといった状況にも「没個性化」は働いているわけですし、そもそも、こうした心理学的な傾向というのは、進化の過程上、なんらかの意味があったから残っているわけです。
匿名な事で社内の不正を発言出来たり、思い切った意見が言えるというプラスの部分もあるわけです。
よくあるアンケートは「没個性化」を考慮していない?
少し話はそれますが、匿名性の代表格としてアンケート調査がありますよね。
企業にとって、顧客や従業員の率直な意見を集めることは、死活問題です。もっとはっきり言うと、厳しい意見こそ、宝なのです。
多くの企業は、それを集めるために、アンケート調査を実施しています。ところが、多くのアンケート調査が、この「没個性化」の存在に配慮していません。そもそも記名式だったり、匿名であっても調査員が目の前にいるために悪いことは述べづらい雰囲気があったりします。
また、複数名のユーザーを集めて製品に対して意見を言ってもらうフォーカス・グループ・インタビューも、企業がよく利用する手段です。この場合も、集める人数が少なすぎたり、ファシリテーターがいちいちグループに割り込んできたりと、「没個性化」が起こりやすくする環境がデザインされているとは言いがたいケースが散見されます。
いかがでしたか?
今回はネットに悪口を書き込んでしまう人の心理をお伝えしました。
匿名性である事は時に恐ろしく、時に役立つ事でもあります。
これから先もネット上の匿名性は維持されるかと思いますが、プラスの面で使っていけるように皆さんで心がける事が重要なのかもしれませんね。